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Dify Enterprise機能ガイド(SSO・RBAC・監査ログ・マルチワークスペース)
大企業・組織でDifyを安全に展開するためのEnterprise機能。SSO(SAML/OIDC)・ロールベースアクセス制御・監査ログ・マルチワークスペース管理の設計と実装を解説。
Dify Enterprise とは
Dify には3つのエディションがある:
Community Edition(CE):
→ OSS。GitHub から無料で利用可能
→ 個人・小チーム向け
→ SSO・高度なアクセス制御なし
Dify Cloud Pro/Teams:
→ SaaS 形式。クレジットカード課金
→ チームコラボレーション機能あり
→ データはDify クラウドに保存される
Enterprise Edition(EE):
→ セルフホスト前提
→ 大企業・規制業界向け
→ SSO・RBAC・監査ログ・マルチワークスペース
→ ライセンス購入が必要
→ 本番データを自社インフラに保持できる
SSO(シングルサインオン)
対応プロトコル
SAML 2.0:
→ Microsoft Entra ID(旧 Azure AD)
→ Okta
→ OneLogin
→ Google Workspace(管理者設定が必要)
OIDC(OpenID Connect):
→ Okta
→ Auth0
→ Keycloak(OSS・セルフホスト)
→ GitLab
→ GitHub Enterprise
設定の流れ(SAML の場合):
1. IdP(Okta 等)で Dify のアプリを登録
2. IdP の Metadata XML を取得
3. Dify の管理画面 → Enterprise → SSO 設定に貼り付け
4. ユーザーが Dify にアクセスするとIDPにリダイレクト
5. 認証成功後、Dify に戻ってくる(SAML Response)
Okta SAML 設定例
Okta 側の設定:
App type: SAML 2.0
Single sign on URL: https://dify.yourdomain.com/api/enterprise/sso/saml/acs
Audience URI (SP Entity ID): https://dify.yourdomain.com
Attribute Mapping(必須):
email → user.email
name → user.displayName
Dify 側(.env.production):
SAML_SP_ENTITY_ID=https://dify.yourdomain.com
SAML_IDP_METADATA_URL=https://your-okta.okta.com/app/xxxxx/sso/saml/metadata
SSO 導入時のユーザープロビジョニング
Just-in-Time(JIT)プロビジョニング:
SSO で初回ログインしたユーザーを自動でアカウント作成
→ 管理者が事前にユーザーを追加しなくていい
→ Dify Enterprise でデフォルト対応
SCIM(SCIMプロビジョニング):
Okta/Azure AD のユーザー変更を Dify に自動同期
→ 社員の入退社時に Dify アカウントも自動で有効化/無効化
→ Enterprise ライセンスが必要
RBAC(ロールベースアクセス制御)
Dify のロール体系
ワークスペースレベルのロール:
Owner(オーナー):
→ ワークスペースの全権限
→ メンバー追加・削除
→ Enterprise 設定の変更
→ 1ワークスペースに1名
Admin(管理者):
→ アプリ・ナレッジの作成・編集・削除
→ メンバーの招待(Owner 以外)
→ API キーの管理
Editor(編集者):
→ アプリの作成・編集
→ ナレッジの作成・編集
→ 他者のアプリを編集できない
Viewer(閲覧者):
→ アプリの利用のみ(ワークフロー実行)
→ ソース(プロンプト・設定)は見えない
→ ナレッジの閲覧のみ
推奨ロール設計:
AI 開発者・プロンプトエンジニア: Admin / Editor
現場スタッフ(ツール利用者): Viewer
IT 管理者: Owner
外部パートナー: Viewer(期限付き招待)
アプリレベルのアクセス制御
アプリの公開範囲設定:
Private(非公開): 作成者のみ
Workspace(社内): ワークスペースのメンバー全員
Public(公開): URL を知っていれば誰でも
実践的な設計例:
開発中のアプリ: Private
テスト中のアプリ: Workspace
本番公開の社内ツール: Workspace(API キーで認証)
顧客向けチャットボット: Public(自社サイトに埋め込み)
監査ログ
Enterprise Edition で記録されるイベント:
認証イベント:
- ユーザーのログイン・ログアウト
- SSO 認証の成功・失敗
- パスワードリセット
管理イベント:
- メンバーの追加・削除・ロール変更
- ワークスペース設定の変更
- API キーの作成・削除
AI 利用イベント:
- ワークフロー・チャットの実行記録
- ナレッジベースの更新
- モデルプロバイダーの変更
ログの活用:
→ セキュリティインシデントの調査
→ コンプライアンス報告(SOC 2 / ISO 27001)
→ 不正アクセスの検知
外部 SIEM への転送:
Dify の監査ログを Splunk / Datadog / AWS Security Hub に
Webhook 経由で転送して集中管理できる
マルチワークスペース管理
ワークスペース分割の設計
どのようにワークスペースを分けるか:
部門別:
workspace-hr → 人事部
workspace-finance → 財務部
workspace-sales → 営業部
→ メリット: 部門の独立性・ナレッジの分離
→ デメリット: 共通ツールの重複作成
プロジェクト別:
workspace-product-a
workspace-product-b
→ スタートアップ・プロジェクト型組織に向いている
環境別:
workspace-dev → 開発・テスト
workspace-staging → QA・受け入れテスト
workspace-prod → 本番
→ AI アプリの開発ライフサイクルを管理できる
推奨(中規模組織):
本番用ワークスペース × 事業部数
+ 開発用ワークスペース × 1(共用テスト環境)
ワークスペース間のナレッジ共有
現状の制約:
ナレッジベースはワークスペースをまたいで共有できない
→ 全社共通のナレッジは「共通ワークスペース」に集約して
そのワークスペースのアプリ API を他から呼び出す
回避策:
共通ナレッジワークスペースを1つ作成
→ 就業規則・製品仕様・コンプライアンス規程
各部門ワークスペースから HTTP Request ノードで呼び出す
→ アプリ API 経由でナレッジを間接参照する
大企業導入時の考慮事項
ガバナンス設計
AI ガバナンスポリシーで決めるべき事項:
利用許可モデルの決定:
① 全社員に開放(イノベーション重視)
② 申請制・審査後に許可(リスク管理重視)
③ 部門ごとに担当者のみ開発可(折衷案)
利用可能なモデルの制限:
→ 外部 API(OpenAI 等)の利用を制限して
社内デプロイの Ollama・Azure OpenAI のみ許可する
→ データ保護観点での重要な意思決定
プロンプト・ナレッジの審査:
→ 個人情報が含まれていないか定期監査
→ AI 出力の品質レビューフロー
コスト配賦:
→ 部門ごとのトークン消費量を管理
→ 監査ログからコスト配賦レポートを生成
調達・ライセンス
Enterprise Edition の購入:
→ Dify 社に直接問い合わせ(公式サイト)
→ ユーザー数・機能範囲によって価格が変わる
→ サポート(SLA)が含まれる
調達時に確認すべき事項:
□ データ処理契約(DPA)の締結
□ SLA(稼働率・サポート応答時間)
□ セキュリティ監査・ペネトレーションテスト報告書
□ 輸出規制・利用地域の制限
□ ライセンスの同時ユーザー数定義
OSS Community Edition を使う場合:
→ ライセンスは Apache 2.0
→ 商用利用可能・改変可能
→ SSO 等の Enterprise 機能は含まれない
→ サポートはコミュニティフォーラムのみ
コンプライアンス対応
規制要件別の対応方針:
個人情報保護法(日本):
→ セルフホスト + 国内リージョンのサーバー
→ ナレッジベースに個人情報を登録しない
→ 個人情報保護審議会への届出
GDPR(EU):
→ EU リージョンのサーバーを使用
→ データ処理契約(DPA)を Dify 社と締結
→ 忘れられる権利への対応(ユーザーデータの削除機能)
HIPAA(米国医療):
→ Business Associate Agreement(BAA)の締結
→ PHI(個人健康情報)を LLM プロバイダーに送らない設計
→ アクセスログの最低6年保存
SOC 2 / ISO 27001:
→ 監査ログを外部 SIEM に転送
→ アクセスレビューの定期実施
→ 変更管理プロセスの整備
Enterprise 導入ロードマップ
Phase 1(1〜2ヶ月): パイロット
→ 1部門 10〜30名での試験運用
→ PoC アプリを2〜3本作成
→ 課題・ニーズを収集
Phase 2(2〜3ヶ月): 本番化・拡大
→ セルフホスト本番環境の構築
→ SSO 設定・RBAC 設計
→ 全社ポリシーの策定
Phase 3(3ヶ月〜): 全社展開
→ 部門ごとのワークスペース分割
→ 社内 AI 開発者の育成
→ ガバナンス・コスト管理の運用開始
参考:関連ドキュメント
- Difyセルフホスト本番構成ガイド — インフラ設計の詳細
- 本番リリース前チェックリスト — セキュリティ確認事項
- Difyアンチパターン集 — AP-10: 個人情報の取り扱い
- Dify API・公開・デプロイ — API 設計の詳細
- 1. ⚠️Difyアンチパターン集(設計・プロンプト・RAG・運用の落とし穴)
- 2. ✅Dify本番リリース前チェックリスト&運用設計ガイド
- 3. ✍️Difyプロンプトエンジニアリング実践ガイド
- 4. 🔍DifyのRAG精度チューニングガイド
- 5. 🛡️Difyハルシネーション対策ガイド
- 6. 🔗Dify×n8n連携ガイド(AIと外部サービスをつなぐオーケストレーション)
- 7. 🖥️Difyセルフホスト本番構成ガイド(Docker・セキュリティ・スケーリング)
- 8. 🏢Dify Enterprise機能ガイド(SSO・RBAC・監査ログ・マルチワークスペース)
- 9. 👨💻エンジニア向けDifyガイド(API統合・CI/CD・テスト自動化)
- 10. 💼ビジネスパーソン向けDifyガイド(ノーコードで始めるAI活用)
- 11. 🚀スタートアップ向けDifyガイド(最小コストでAI機能を最速でリリース)
出典: Dify公式ドキュメント / Enterprise Edition ガイド