QMS構築・運用の実践ヒント
品質方針を経営トップから発信させる方法、プロセス改善・PMO・プロセス監査という3つの役割の設定方法、三権分立アナロジーによるQMS理解
概要
QMSを絵に描いた餅にしないための実践的なポイントは大きく2つある。
- 品質方針を経営トップから発信させる — 品質保証部門が作り、トップに出してもらう
- 3つの役割を分離して設定する — プロセス改善・PMO・プロセス監査を独立させる
ヒント1:品質方針を経営トップから発信させる
なぜ経営トップでなければならないか
ISO 9001の要求事項に「トップマネジメントは、品質方針を確立し、実施し、維持しなければならない」とある。品質方針とは、組織が企業活動のあらゆる決定を下すときの基準とすべき品質に対する考え方であり、経営トップによって社内外に表明するもの。
現場だけが品質を意識しても、経営判断が品質より納期・コストを優先した瞬間に崩れる。品質方針は経営トップが出すことで初めて組織全体の行動規範になる。
品質保証部門の役割
品質方針は経営トップが自然に作るものではない。品質保証部門(またはその役割を担うメンバー)が:
- 品質方針の案を作成する
- 必要性とメリットを経営幹部に説明する
- 経営トップから品質方針を発信してもらうよう働きかける
ISO 9001認証の有無・組織の大小にかかわらず、このプロセスが肝要。
品質方針の例
品質に対する優先度が簡潔に伝わる内容が望ましい。
- 例1:品質第一、お客様に満足いただけるソリューションを提供しよう
- 例2:安全・安心な製品・サービスを提供する
- 例3:当社はあらゆる企業活動において品質を重視する(品質は納期やコストよりも優先する)
- 例4:お客様の立場に立った適正な品質の製品とサービスを提供する
品質方針を掲げた上で、それに準拠するための組織的な行動を下の階層で補足的に書き表すことで、従業員が具体的な行動に結びつけられる。
ヒント2:品質文化の醸成
QMSの形だけ整えても、現場に品質を重視する文化がなければ機能しない。醸成のための活動として:
- 品質文化醸成活動のキックオフを品質保証部門内で実施する
- 経営幹部への働きかけだけでなく、現場メンバーによるボトムアップ活動(ワーキンググループなど)も併せて実施する
開発現場から「余計な仕事が増える」と反発を受けることも想定される。そのような場合、品質保証部門の管理者は担当者とよく状況を確認し、推進側内部のコミュニケーション頻度を上げる配慮が重要。
ヒント3:プロセス改善・PMO・プロセス監査という3つの役割を設定する
QMSを構築する際、以下の3つの役割を明確に分離して設定する。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| プロセス改善 | プロセスを規定し、問題があれば改善する役割 |
| PMO(Project Management Office) | 業務現場において、規定したプロセスの実施に則り推進する役割 |
| プロセス監査 | 客観的な視点でプロセスの実施に問題がないかを確認する役割 |
3つの役割(または組織)が互いに連携しフォローし合う関係を構築することが重要。
三権分立との対比
この3役割の独立性は「三権分立」と対比するとわかりやすい。
| 三権分立 | QMSにおける役割 |
|---|---|
| 立法権:法律を提案し、審議し、制定する | プロセス改善:組織の基準(ルール)を必要に応じて立案、策定し、都度改善を行う |
| 行政権:法律を執行し、日常的な運営や政策を実施し、公の目的を達成する | PMO:開発現場において、現場のプロセスの実行状況を評価するとともに、プロジェクトの成功に向けて推進する |
| 司法権:法律に基づき、公正な判断を行うことで法の支配を確保する | プロセス監査:プロセス監査観点を整備し、定期的に開発現場プロセスに対して監査を行い、基準との適合性を評価する |
3つの機能がそれぞれの独立性を維持しながら機能することで、組織全体の強靭化につながる。
小さな組織での始め方
3役割をバランスよく設定できない場合は、まず業務の流れを整理してプロセスを定義することから始める。プロセスが定義されていなければ、改善も監査も成立しない。PMOは現場のプロジェクトの範囲に応じて担当分野を決めておく。
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