動画編集の全体像と工程を理解する — Claude Code自動化の前に知っておくこと【第1回】

subaru · ·

動画編集者からこんな相談を受けた。

「クライアントから1時間の素材をもらって、10分に編集してほしいと言われる。文字起こし・ジェットカット・字幕テロップの粗編集を毎回手作業でやっている。Claude Codeで自動化できないか」

この相談の本質は「動画編集の自動化」ではなく、「繰り返し作業をスクリプトに置き換えること」だ。まず動画編集の全体像を整理し、どこが自動化できてどこが人間の判断が必要かを明確にする。

動画編集の全工程

動画編集は大きく4つのフェーズに分かれる。

1. 粗編集(ラフカット)

素材を見て、使う部分と使わない部分を大まかに仕分ける工程。

  • 素材の確認 — 全素材を流し見して内容を把握する
  • 文字起こし — 発言内容をテキスト化して整理する
  • 不要部分のカット — NG・間違い・無音部分を削除する
  • 順番の整理 — 素材を必要な順に並べ替える

2. 細編集(ファインカット)

粗編集で形になったタイムラインをさらに磨く工程。

  • ジェットカット — 会話の間・呼吸音を詰めてテンポを上げる
  • トランジション — カット間のつながりを自然にする
  • BGM・SE — 音楽・効果音を挿入する
  • テロップ — 字幕・説明文を入れる

3. カラーグレーディング

映像の色を整える工程。明度・彩度・コントラストの調整。

4. 書き出し(エクスポート)

完成した動画を指定のフォーマット・解像度・ビットレートで出力する。

自動化できる部分とできない部分

工程自動化理由
文字起こしできるWhisperが高精度で処理する
ジェットカットできるauto-editorが無音区間を検出する
字幕焼き込みできるffmpegで一括処理できる
素材の仕分けできない内容の善し悪しは人間が判断する
順番の整理できないストーリー構成は人間が決める
カラーグレーディング一部できる基本的な補正はffmpegで可能

Claude Codeで自動化できるのは繰り返し発生する定型作業だ。「どこを残すか」の判断は人間がやる。

ユースケース別の活用パターン

ユーチューバー・解説動画

  • 収録した長尺動画の文字起こし → 台本との差分確認
  • ジェットカットで間を詰めてテンポアップ
  • 字幕を自動生成して視聴者の離脱を防ぐ

削減できる時間: 1時間素材の粗編集が3時間→30分程度

オンライン講座・研修動画

  • 講師の発言を自動で文字起こし → テキスト教材化
  • 無音・間の自動カット
  • チャプター分割のための文字起こしデータ活用

削減できる時間: 字幕制作が1時間→5分程度

クライアントワーク(動画制作会社)

  • 素材受け取り → 粗編集の前処理を自動化
  • 複数素材の一括処理(バッチ処理)
  • 書き出し設定の統一化

削減できる時間: 粗編集の準備作業を毎回ゼロにできる

インタビュー・対談動画

  • 音声認識で話者を識別(Whisper large v3対応)
  • 発言ごとのタイムスタンプ付き文字起こし
  • カット位置の候補を自動で提示

最適化ポイント

収録段階での工夫

自動化の精度は収録品質に依存する。

  • マイクを使う — 内蔵マイクより外付けのほうが文字起こし精度が上がる
  • 静かな環境で収録する — 背景ノイズがあるとWhisperの精度が落ちる
  • 一文一文区切って話す — ジェットカットが綺麗に入る

処理速度の最適化

  • GPUを使う — Mac Apple SiliconはWhisperのMPS(Metal)加速が使える
  • モデルを選ぶturboモデルは大型モデルに近い精度を速く処理できる
  • バッチ処理 — 複数ファイルをスクリプトで一括処理する

品質と速度のバランス

目的推奨モデル処理時間の目安(1時間素材)
下書き確認tiny / base数分
字幕用途turbo10〜20分
高精度議事録large-v330〜60分

Claude Codeの役割

Claude Codeは「コードを書く」ツールだ。動画処理そのものはffmpeg・Whisper・auto-editorがやる。

Claude Codeに「動画を編集して」と言っても動かない。「ffmpegとWhisperを使って文字起こし→字幕焼き込みを行うスクリプトを書いて、実行して」と言うと動く。

つまりClaude Codeを活用するには、使いたいツールの概要を知っている必要がある。どんなツールが存在して、何ができるかを把握していれば、あとはClaude Codeに「これをやって」と指示できる。

シリーズ構成

  • 第1回: 動画編集の全体像と工程(この記事)
  • 第2回: 環境構築(ffmpeg・Whisper・auto-editorのインストール)
  • 第3回: ffmpegの使い方 — 動画処理の基本コマンド
  • 第4回: Whisperの使い方 — 文字起こし・SRT字幕生成
  • 第5回: auto-editorの使い方 — ジェットカット自動化
  • 第6回: Claude Codeで全工程を自動化する

次回は環境構築。ハマりポイントも含めて記録する。